全日本最優秀ソムリエの阿部誠氏に聞く、シャンパーニュとは?

「飲む宝石」とも例えられるシャンパーニュ。キラキラと立ち上る泡はまるで宝石のようで結婚式や誕生日、記念日などお祝いの席にはかかせませんよね。“特別なお酒”や“高級なお酒”とイメージする人も多いと思いますが、そこにも様々な種類があります。シャンパーニュとは何か?と尋ねられて明確に答えられる人はきっと少ないはず。

そこで、当コラムでは、2002年度全日本最優秀ソムリエであり、現在はシャンパーニュ『パルメ』のブランドアンバサダーを務める、シャンパーニュのスペシャリスト阿部誠氏にシャンパーニュの魅力について、さまざまな角度から解説していただきます。はたしてシャンパーニュはどんな飲み物なのでしょうか?

全日本最優秀ソムリエの阿部誠氏に聞く、シャンパーニュとは?


2002年度全日本最優秀ソムリエ・阿部誠さん
2002年第3回全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝し、2004年第11回世界ソムリエコンクールの日本代表に選出される。ホテル西洋銀座から、都内レストランの支配人兼シェフソムリエを経て、2004年に独立し、東京・銀座に「サロン・ド・シャンパーニュ・ヴィオニス」を開業。一般社団法人日本ソムリエ協会常務理事。

スパークリングワインとシャンパーニュの違いって?

シャンパーニュはスパークリングワインの一種ですよね。スパークリングワインとシャンパーニュの違いってどういうところにあるのでしょうか?

阿部さん

“シャンパーニュ”というのは、フランスの北東部のランスという街を中心に広がるワイン生産地の名前でもあり、この産地内で規定のブドウ品種を用いて栽培、収穫され、定められた醸造方法と熟成方法で造られた発泡性ワインのことを指します。

従いまして他の国や別の産地で造られるスパークリングワインはシャンパーニュと呼ぶことが出来ません。

スパークリングワイン…発泡性のワインの総称。酵母の発酵により発泡しているものと、ワインに人工的に炭酸を加えたもの。
シャンパン…フランスのシャンパーニュ地方で、伝統的な瓶内二次発酵方式でつくられるスパークリングワイン。ワイン法で、使用するブドウ品種や製造方法などが定められており、これをクリアしたものがシャンパーニュ(通称シャンパン)と呼ばれる。

その地域以外で造られるスパークリングワインはシャンパーニュと呼ぶことは出来ないんですね。他のスパークリングワインをシャンパンって呼ばないように気を付けないと。

阿部さん

ランスはパリから東に150kmほど離れた場所にあり、TGV(フランスの高速鉄道)で1時間もかからずに行けるので、フランス旅行の際はぜひ訪れて欲しいですね。

パリから1時間もかからないんですね!ぜひ行ってみたいです。

シャンパーニュの誕生

阿部さん

歴史の話をすると、元々は、この地に古代ローマ人がブドウを持ち込んだのが4世紀ごろと考えられていて、その頃はまだ発泡性ではないワインが造られていました。当時はパリのセーヌ川の支流でもあるシャンパーニュ地方の中心を東から西へ流れるマルヌ川を利用して各地に運ばれていました。後に発泡性ワインは英国で偶発的に誕生したと考えられており、冬の寒さで発酵が止まってしまった樽詰めワインを英国でガラス瓶に詰め替えコルク栓をして販売されていたのが、春になり再び瓶内で発酵が始まりワインの中にガスが出来たのがシャンパーニュの誕生と言われています。

シャンパーニュは偶然の産物で、その泡は発酵の際に発生した炭酸ガスから来ているんですね。一度瓶に詰めたワインがもう一回発酵するなんて!

阿部さん

現在のようなスタイルに近くなり、本格的に商業化されたのは1729年頃で、それまでは樽詰めワインのみが流通されていたのですが、前年の1728年にビン詰めのワインの流通がルイ15世によって許可された事により瓶内二次発酵の技術が可能となります。

偶発的に起きた瓶内二次発酵の技術が確立されたんですね。

阿部さん

また、同じ頃には現在も残る有名メゾンが次々に創設され、さらに技術改良により品質も上がりほぼ現在のようなスタイルに近くなりました。そしてさらには英国、ロシア、米国などの外国にも輸出がされるようになったのです。

阿部さんがブランドアンバサダーを務める『パルメ』

阿部さんがブランドアンバサダーを務める『パルメ』もその時期に創設されたのでしょうか?

阿部さん

パルメの創設は1947年なので、シャンパーニュの歴史を考えると比較的新しいメゾンといえますね。しかしながら、2020年のシャンパーニュ&スパークリングワイン世界選手権(世界的なワインコンクールのひとつ)で「ブリュット・レゼルヴ」がノンヴィンテージ部門で世界一に輝いており、世界的に評価されているシャンパーニュメゾンです。

世界一を獲得した「ブリュット・レゼルヴ」は本当に美味しいシャンパーニュですよね。阿部さんが思う「ブリュット・レゼルヴ」の魅力を教えていただけますか?

阿部さん

当然ながら優良な畑から選りすぐった高品質なブドウだけを用いて最高峰の技術を駆使して造られますが、更にスタンダードキュヴェながら「ブリュット・レゼルヴ」は約4年間の瓶内熟成を経て出荷されます。この長い熟成期間がシャンパーニュの細やかな泡立ちと複雑なアロマを放ち、味わい深さを生み出しています。フレッシュさの中に複雑さを感じる要素が多く存在している事が「ブリュット・レゼルヴ」の特徴であり、魅力です。

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